OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU
CIP-113・OpenZeppelin・Liqwid・Midnightから読むCardanoの現在地
CIP-113、OpenZeppelin国庫提案、Liqwidの借入動向、Midnight City、Midnight Bridge準備など、2026年9月30日時点のCardano主要ニュースを一次情報ベースで整理し、CardanoがRWA・AI Agent・Privacy・DeFi・Governanceを結び始めている構造を解説する。
現在日付:2026-09-30 JST
情報源・概要
本稿は、Cardano Foundation、Cardano CIPs、Intersect、Midnight公式GitHub、Midnight Tokenomics and Incentives Whitepaper、Midnight City、Liqwid、DefiLlama、Open Wallet Standardなどの一次・準一次情報を照合して作成した。
一文要約:Cardanoは、単なるDeFiチェーンから、規制対応資産・AI Agent・Midnightを含む「プログラマブルな金融基盤」へ広がり始めている。
BWtake、今日のニュースは単発の材料が多いように見えますが、全体を俯瞰するとかなり明確な方向性があります。
Cardanoが「DeFiチェーン」から、規制対応資産・AI Agent・Midnightを含む“プログラマブルな金融基盤”へ広がり始めている。
一方、記事にはいくつか表現上・事実確認上の修正点があります。特にCIP-113、Epoch 661、Midnight City、Node 11.1.3は注意が必要です。
まずFact Check
| 項目 | CGTA確認 | コメント |
|---|---|---|
| CIP-113 | 🟡 重要な進展だが「正式採用」は要留保 | Programmable Tokens Platform自体は稼働済み。直近一次資料ではCIP-0113をCandidateとして扱う資料もあり、「CIPプロセスとして完全にFinalized」を今回の検索では確認できず |
| OpenZeppelin ₳11,787,063 | 🟢確認 | Intersect公式に進行中。期限は10/11表記 |
| Liqwid DJED借入 約$3.0M | 🟢確認 | 現在約$2.99M、利用率約90.4% |
| Cardano TVL 約$66M | 🟢確認 | DefiLlama現在値も約$66.5〜66.7M |
| DEX出来高 約$3.3M | 🟢概ね整合 | 時点によって$2〜4.6M程度に変動 |
| Midnight City Agent Wallet | 🟢実装確認 | ただしネットワーク名が記事では逆になっている可能性 |
| Midnight Node 2.1.0-rc.3 | 🟢確認 | Bridgeコードあり。ただしBridgeは未有効 |
| Cardano Node 11.1.3 | 🟡 | CHaPには11.1.3パッケージが存在。ただしGitHub Releasesでは11.1.2が最新表示 |
| minPoolCost→75 ADA | 🟢確認 | 投票中 |
1. 今回もっとも重要なのはCIP-113
記事では、
「条件を組み込めるプログラマブルトークン」
と説明されています。
方向としては正しいですが、技術的にはもう少し面白い仕組みです。
従来のCardano Native Assetは、
発行するとき
↓
Minting Policy
↓
発行・Burnを制御はできます。
しかし、一度発行された後の、
Alice
↓
Bobという転送そのものを発行者側のルールで継続的に制御する標準手段は弱かった。
CPS-0003もまさにこの問題を指摘しており、現行Native Tokenでは基本的に「forge時は制御できても、その後のinteractionを制御できない」と整理しています。
CIP-113が狙っているのは、
Native Asset
+
programmable logic
↓
transfer時にも条件判定です。
Cardano Foundationは具体例として、
- allow list / deny list
- 本人確認済みアドレスだけへの送金
- 法的命令に基づくfreeze
- jurisdictionごとのtransfer restriction
- mint / burn / transfer条件
などを挙げています。
重要なのは「Native Assetを捨てない」こと
EthereumのERC-20のように、
Token = Smart Contractへ全面移行するのではありません。
CIP-113の方向性はむしろ、
Cardano Native Asset
│
├─ Native Assetとしての効率性
│
└─ Programmable Logicです。
旧CIP-143も「既存DAppとのcomposabilityを失わず、transfer/lifecycleをprogrammableにする」ことを目的としており、その設計がCIP-113へ統合されています。
ここはCardanoらしい。
2. なぜCIP-113がRWAで重要なのか
これは単なる新しいトークン規格ではありません。
例えば銀行が、
100億円のトークン化債券
を発行するとします。
完全permissionlessなNative Assetでは、
発行
↓
誰でも受領可能
↓
誰でも転送可能となります。
しかし現実の金融商品には、
KYC済みか?
居住国は?
適格投資家か?
transfer restriction対象か?
凍結命令があるか?などがあります。
そこで、
RWA
│
├─ 資産としてはCardano Native Asset
│
└─ Transfer時
↓
programmable rule
↓
OK → transfer
NG → rejectという構造が必要になる。
Cardano Foundation自身もCIP-113をequities、commodities、stablecoinsなどのtokenization拡大の基盤として位置付けています。
つまり、
Cardano Native Assetの単純さを残しながら、Institutional Financeが要求する制約を追加する。
ここが核心です。
3. これはCIP-159とも相性がいい
以前BWtakeと詳しく見たCIP-0159との関係も面白いです。
概念的には、
Cardano
│
┌───────┴───────┐
│ │
CIP-113 CIP-159
Programmable Account
Token enhancement
│ │
└───────┬───────┘
↓
Institutional Assetとなり得ます。
Ethereum型Account Modelへ変えるのではなく、
eUTXOを維持したまま「必要な部分だけprogrammability / account-like functionalityを足す」
という方向です。
私はここをCardanoの近年の設計思想としてかなり重要だと見ています。
4. ただし「CIP-113正式採用」は少し慎重に読むべき
ここは記事より慎重な表現にします。
Cardano Foundationは3月の時点でProgrammable Tokens Platformを公開し、CIP-0113をオープン標準として紹介していました。ただし当時はformalization process中と明記されています。
9月16日のCardano Forumでも、
CIP-0113 candidate — final call for review before merge
という状態でした。
今回「mergeされた」という情報そのものは十分あり得ますが、2026-09-30時点でCardano公式CIPページ上の最終ステータスをCGTAの検索結果から独立確認できませんでした。
したがって現時点では、
「CIP-113が正式リポジトリ統合フェーズへ到達した」
程度の表現が安全です。
「プロトコルに実装された」という意味ではありません。
この違いは重要です。
CIP策定・merge
↓
reference implementation
↓
wallet / DApp対応
↓
audit
↓
production adoptionです。
5. OpenZeppelin ₳11.787M案——問題はOpenZeppelinの能力ではない
現在の提案は、
₳11,787,063
です。
Intersect公式でも10月11日を期限として掲載されています。9月25日時点では必要67%に対してDRep Yes 2.33%程度でした。
今回の争点は、
OpenZeppelinが優秀かどうか
ではありません。
むしろ、
既存のCardano developer toolingへの投資とのScope overlapをどう整理するか
です。
この違いはDRepとしてかなり重要です。
DRepとして見るべき項目
| 評価軸 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 技術能力 | OpenZeppelinの実績 |
| Cardano適合性 | eUTXO/Plutus向け設計 |
| Scope | 既存Contract Libraryとの重複 |
| Deliverable | 何を誰が所有するか |
| OSS | ライセンス |
| Maintenance | 納品後の保守 |
| Duplication | IO Developer Experience等との重複 |
| Value for Money | ₳11.8Mの妥当性 |
つまり、
「良い会社だからYES」でも「重複があるからNO」でもまだ粗い。
必要なのは、
既存予算
│
├─ IO DevEx
├─ Contracts Library
└─ その他security tooling
↑
│ overlap map
↓
OpenZeppelin Stackのdeliverable単位の比較です。
なおCardano憲法はTreasury Withdrawalについて、目的・期間・費用、過去24か月のTreasury受領、監査、administratorなどを明示することを要求しています。
BWtakeが以前Abstain→NOに変えた際の「重複・境界が解消されていない」という論点は、この観点からかなり本質的です。
6. LiqwidでADA借入がDJEDを抜いたのは面白い
これは数字そのものより、借入行動の変化を見るべきです。
DJED市場は現在、
- Supply 約 $3.31M
- Borrow 約 $2.99M
- Utilization 90.37%
- Borrow APR 34.90%
まで逼迫しています。
Liqwidでは借入需要が高くなるほどutilizationが上がり、金利も動きます。
したがって、
ADA Borrow > DJED Borrow
だけを「ADA人気」と読むのは危険です。
考えられる要因は、
① ADAの方向性に対するポジション
② DeFi内の裁定
③ LP用途
④ ADA collateral/borrow戦略
⑤ DJED側の高utilizationによる借入コスト上昇などです。
特にDJEDは90%を超えているので、
ADA需要増だけでなくDJED市場の供給制約
も一部寄与している可能性があります。
したがって今回の変化は、
「Cardano DeFiの資金需要がstablecoin一辺倒ではなくなってきた」
程度に読むのが適切です。
7. TVL $66Mより実はStablecoin $67Mの方が面白い
今日のDefiLlamaでは概ね、
| 指標 | 現在値 |
|---|---|
| TVL | 約$66.5M |
| Stablecoin Market Cap | 約$67.2M |
| Stablecoin 7d | +約25% |
| DEX 24h | 約$3.4M前後 |
| Perps 24h | 約$11M |
| App fees 24h | 約$14.2K |
となっています。
BWtakeと以前見た、
Stablecoin Market Cap ≈ TVL
という特徴が依然として続いています。
しかも今回はstablecoin market cap自体が7日で約25%増えています。
これはDEXの日次+28%より、中期的にはこちらの方が重要だと思います。
8. Midnight CityのAgent Walletはかなり重要
これは今日の記事の中でCIP-113に次いで面白いところです。
Open Wallet Standard(OWS)は、
AI Agentがwalletを操作するための共通interface + key storage + policy-controlled signing
を目指しています。
OWS公式仕様では、
- local-first
- encrypted key storage
- multi-chain
- policy before signing
- Agent access
が設計されています。
つまり、
AI Agent
↓
Open Wallet Standard
↓
Policy Engine
↓
Wallet
↓
Blockchainです。
これは以前話したMasumiともつながります。
AI Agent
│
┌───────────┼───────────┐
│ │ │
OWS Masumi x402
│ │ │
Wallet Identity Payment
│ / Escrow │
└───────────┼───────────┘
↓
Cardano
│
Midnightこれが少しずつ部品として揃ってきています。
9. Midnight Cityは「ゲーム」より実験場として見ると理解しやすい
Midnight City公式自身が、
persistent world where AI heroes live, work, fight and earn
という形でAgent economyを実験しています。
したがって、
AI Agent
↓
資源獲得
↓
Wallet保有
↓
取引
↓
経済活動を仮想世界の中で先に試せる。
これは以前BWtakeと話した通り、
Midnight City = Agentic Economyのsandbox
として見ると非常に分かりやすいです。
10. ただし記事のtestnet表記には修正が必要
記事には、
Midnight「Preprod」 Cardano「Preview」
とあります。
Midnight City公式Release Notesでは現在、
Midnight Preview Cardano Preprod
へagent-wallet integrationを移した、と記載されています。
したがって記事はPreview / Preprodを逆に記載している可能性が高いです。
11. Midnight 2.1.0-rc.3のBridgeは非常に重要
こちらはかなり明確です。
Midnight公式GitHubには、
node-2.1.0-rc.3
が9月28日に公開されています。
そして実際に、
pallet-c2m-bridgeつまり、
Cardano → Midnight
bridgeのコードがあります。
さらにtoolkitには、
bridge-transfercommandまで追加されています。
ただし重要なのはここです。
Bridge is not complete.
そして、
governance actionでMainChainScripts addressとcheckpointを設定しない限りBridgeはInert
と明記されています。
つまり現在は、
コード █████████░
設定 ███████░░░
Governance ███░░░░░░░
実利用 ░░░░░░░░░░という段階。
12. これはMidnight Whitepaper通りの実装が出てきたとも言える
Midnight Tokenomics Whitepaperでは、
NIGHTはCardanoとMidnightの双方にnativeに存在する
設計になっています。
さらに、
Cardano側でunlockされたNIGHTをlockし、Midnight側で対応するNIGHTをunlockするprotocol-level bridge
が段階的に構築されると明記されています。
さらにWhitepaperには、最初はCardano→Midnightの一方向、その後CardanoがMidnightの状態を観測できるようになれば二方向Bridgeへ発展するロードマップまであります。
つまり今回のrc.3は、
Whitepaperに書かれていたcross-chain architectureが実コードとして姿を現し始めた
という点が本質です。
これはかなり重要です。
13. Lace Midnight Preview終了も実は良い意味
これは「Midnight対応終了」ではありません。
むしろ、
以前
Lace
+
Lace Midnight Previewから、
今後
Lace
│
Cardano + Midnightへ一本化していく動きです。
Lace側も、Midnight開発が通常Laceへ移ったためPreview extensionを9月30日で終了すると説明しています。
つまり、
Midnightが“特殊な実験機能”から通常wallet stackの一部へ移りつつある
と見る方が適切です。
14. Cardano Node 11.1.3については記事をそのまま信用しない方がいい
ここもFact Check上重要です。
CHaPには確かに、
cardano-node-11.1.3
というpackageが9月22日付で存在します。
しかしIntersect公式GitHub Releasesでは、現時点でも、
11.1.2 = Latest
です。
したがって、
「Cardano Node 11.1.3正式公開」
とはまだCGTAから断定できません。
おそらく、
package revision / build versionと正式release tagの区別
が記事で混同されている可能性があります。
IPv4修正の部分についても一次Release Notesを確認できないため、ここは未確認とします。
15. minPoolCost 75 ADAは憲法上も少し面白い
Cardano憲法ではminPoolCostは、
governance systemにcriticalなparameter
として扱われています。
さらにGuardrailは、
minPoolCostはpool運営のeconomic costに沿うべき
としています。
したがってDRepとして本当に問うべきなのは、
170 → 75 ADAなら小規模Poolが助かるか?
だけではなく、
75 ADAが実際のpool operation costを合理的に反映しているか?
です。
これは憲法的にもかなり重要な論点です。
16. Epoch表記には1日程度のズレがある
BWtakeのCardano Epoch表では、2026-09-30現在は、
Epoch 658:9月27日06:44:51〜10月2日06:44:51 JST
です。
そして、
| Epoch | JST |
|---|---|
| 659 | 10/2 06:44〜10/7 06:44 |
| 660 | 10/7 06:44〜10/12 06:44 |
| 661 | 10/12 06:44〜10/17 06:44 |
です。
したがって、
「Epoch 661=10月11日頃」
という記事表現はBWtakeの基準Epoch表とは一致しません。
ただしIntersect公式自体が「Oct 11, 2026 (Epoch 661)」と記載しています。
これはaction expiry表記とepoch boundaryの扱いによるズレの可能性があります。投票する場合は10月11日ギリギリではなく、十分前に処理する方が安全です。
今回のニュースを一本につなぐと
個々のニュースを並べると、
CIP-113
Programmable Asset
│
↓
RWA / Stablecoin
│
↓
Cardano DeFi
│
├──── Liqwid
│
└──── FluidTokens
AI Agent
│
↓
Open Wallet Standard
│
↓
Midnight City
│
↓
Midnight
│
↓
Cardano ⇄ Midnight Bridgeとなります。
さらに、
Governance
│
├─ OpenZeppelin Stack
└─ minPoolCostがそのインフラと経済条件を決める。
私は今回のニュース群を、
「Cardanoのプロトコル機能が、RWA・AI Agent・Privacy・DeFi・Governanceという別々の領域から接続され始めた段階」
と整理するのが最も適切だと思います。
5段階シナリオ:今後12〜24か月
以下はCGTAの推測で、確率は主観推定です。
| Scenario | 確率 | 展開 |
|---|---|---|
| S5 | 15% | CIP-113がRWA/Stablecoinで採用、Midnight Bridge・Agent Wallet・x402/Masumiが接続し、Cardanoがregulated asset+agent economyの主要基盤の一つになる |
| S4 | 35% | CIP-113、Midnight、AI Agentの一部が実用化。TVL/Stablecoin/利用量が緩やかに拡大 |
| S3 | 30% | 技術は完成するが利用拡大は限定的。Cardano独自の強い技術基盤として残る |
| S2 | 15% | wallet/DApp対応やRWA発行者の採用が遅れ、規格は存在するが利用が限定される |
| S1 | 5% | 標準・Bridge・Agent infrastructureが分断され、開発投資に対する実利用がほとんど生まれない |
中心はS4〜S3と見ます。
そして今後見るべき先行指標は、価格よりも、
- CIP-113対応wallet/DApp数
- RWA発行件数
- Cardano stablecoin供給量
- Midnight Bridge activation
- Midnight DUST実消費量
- OWS/Masumi/x402経由のAgent transaction数
- LiqwidなどDeFi borrowingの継続的拡大
です。
この7つが同時に伸び始めれば、BWtakeが以前から言っている「憲法 × eUTXO × Midnightのバタフライ効果」が、抽象的な設計思想ではなく実際のeconomic activityとして現れ始めた、と判断できる段階に入ります。
主要情報源
- Cardano Foundation — Programmable Tokens / CIP-113関連資料
- Cardano CIPs — CPS-0003 / CIP-0113 / CIP-0143
- Intersect — Weekly Update / Governance action情報
- Midnight Network — GitHub Releases / node 2.1.0-rc.3
- Midnight Tokenomics and Incentives Whitepaper, Version 1.0, June 2025
- Midnight City — Release Notes
- Open Wallet Standard — 公式仕様
- Liqwid Finance — Market data / User Guide
- DefiLlama — Cardano TVL / Stablecoin / DEX / Fees
- Cardano Blockchain Ecosystem Constitution / Guardrails
- BWtake project file — Cardano Epoch table
作成日時:2026-09-30 JST