OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU
主要5チェーンのチェーン肥大化比較:Cardano・Bitcoin・Ethereum・Solana・Sui
主要5チェーンを履歴データ、state growth、pruning、archive依存、ノード運用コストの観点から比較し、Leios導入後のCardanoの長期課題を評価します。
1. 結論
2026年8月時点で、チェーン肥大化への総合耐性は Bitcoinが最も高い。
Cardanoは現在のPraos環境ではかなり健全であり、EUTXOによるstate管理、比較的低いデータ生成量、Mithrilによる高速bootstrapなどの強みを持つ。
しかし、Leios導入後は事情が変わる。
LeiosはCardanoのデータ処理能力を大幅に引き上げる一方、Cardanoには現状、履歴データのarchiving、sharding、pruningを前提とした包括的な仕組みがない。このためLeiosが実際に高い利用率を達成すれば、長期的にはstorage architectureの再設計が重要になる。
今回の再評価では、Cardanoを単純に「肥大化に強いチェーン」と評価するのではなく、
現在は肥大化が小さいが、Leios後の高スループット時代に向けた履歴管理機構は未完成
と評価するのが適切である。
2. 「チェーン肥大化」は5種類に分ける必要がある
単純なブロックチェーン容量だけでは比較を誤る。
| 種類 | 意味 | 主な問題 |
|---|---|---|
| 履歴肥大化 | 過去ブロック・トランザクションの累積 | SSD/HDD容量、同期時間 |
| State肥大化 | 現在有効なUTXO、Account、Contract state | RAM、SSD IOPS、検証速度 |
| Index肥大化 | Explorer・RPC用検索DB | RPCノード大型化 |
| Snapshot肥大化 | 高速同期用snapshot | Bootstrapコスト |
| Archive肥大化 | 全履歴・旧state保存 | データセンター依存 |
したがって、
「通常ノードが500GBだからチェーンが軽い」
とは限らない。
SolanaやSuiのように古い履歴を通常ノードから積極的に切り離すチェーンでは、validator自体の容量を抑えられても、ネットワーク全体で生成される履歴データは巨大になり得る。
3. 主要5チェーン総合比較
対象は以下の5チェーンとする。
- Bitcoin
- Cardano
- Ethereum
- Solana
- Sui
| 項目 | Bitcoin | Cardano | Ethereum | Solana | Sui |
|---|---|---|---|---|---|
| データ生成速度への耐性 | ★★★★★ | ★★★★☆ 現在 | ★★★☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆☆ |
| State肥大化耐性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
| 通常ノード容量 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
| Pruning成熟度 | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| Archive依存の低さ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
| 家庭・小規模運用適性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
| 高TPS時の将来耐性 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
| 総合評価 | S5 | S4→S3 | S3 | S2 | S2〜S3 |
Cardanoの「S4→S3」は、現行PraosとLeios後を分けて考える必要があることを示す。
4. Bitcoin――最も「太らせない」設計
Bitcoinの最大の強みは、単にTPSが低いことではない。
- UTXOモデル
- arbitrary smart contract stateが限定的
- block spaceが強く制約される
- pruningが成熟している
- archive機能とconsensus validationを分離できる
という構造そのものが肥大化を抑えている。
Bitcoin Coreでは、pruningを有効にしてもブロックを一度検証したうえで不要になったraw blockやundo dataを削除できる。
つまりBitcoinは、
「チェーンを最初から急速に太らせない」+「検証後の古い履歴を捨てられる」
という二重の防御を持つ。
評価
肥大化耐性:S5
長期的にも5チェーン中、最もstorage requirementを予測しやすい。
5. Cardano――現在は優秀だがLeiosが転換点
CardanoはBitcoinと同じUTXO系統だが、スマートコントラクトを扱えるEUTXOを採用している。
Ethereumのように巨大なglobal mutable stateを中心に動作するAccount型とは性質が異なる。
これは長期的なstate growthの面で有利である。
さらにMithrilによって、genesisから全ブロックを逐次同期する代わりに、stake-certified snapshotを利用してCardano nodeを高速bootstrapできる。
したがって、
同期時間の問題と、履歴そのものの保存量の問題は分けて考える必要がある。
Mithrilは前者には強力だが、後者を自動的に解決するものではない。
6. Cardano最大の課題
Ouroboros Leiosの分析資料では、現在のCardano ledgerにはarchiving、sharding、pruningの包括的な仕組みがなく、永久storage requirementが処理したtransaction dataに応じて増加することが課題として認識されている。
現行Cardanoではデータ生成量そのものが比較的小さいため、問題はまだ深刻ではない。
しかしLeiosではデータ処理能力が大幅に増加する。
公開ロードマップ・分析では、おおむね以下のレンジが想定されている。
| 指標 | 現行Cardano | Leios想定 |
|---|---|---|
| データ処理量の目安 | 約4.5 Tx-kB/s | 約140〜300+ Tx-kB/s |
| 設計解析の代表値 | - | 約250 Tx-kB/s |
| TPS目標の一例 | - | 最大約1,500 TPS |
| 現行比 | 1 | 約30〜65倍 |
250kB/sを1年間、常時フル利用する極端な上限計算では、
約7.9TB/年
に相当する。
一方、4.5kB/s相当なら、
約142GB/年
程度となる。
これはあくまでcapacityを常時使い切る仮定であり、実際のチェーン成長量の予測ではない。
重要なのは、
LeiosはCardanoの処理能力問題を解決する一方、その成功によって永久storage問題を顕在化させる可能性がある
という点である。
7. Mithrilはpruningではない
ここは重要な区別である。
Mithrilは、
過去履歴を消す技術ではなく、信頼可能なsnapshotを使って高速にbootstrapする技術
である。
したがって、
Mithril ≠ history expiry / pruning
である。
Bitcoin pruningやEthereumのhistory expiryとは役割が異なる。
このためLeios時代のCardanoでは、将来的に、
- Mithril
- history pruning
- archival layer
- distributed history availability
などを組み合わせる方向が合理的と考えられる。
これは将来予測を含むが、Leios側が永久storage requirementを課題として明示している以上、自然な技術的発展方向である。
8. Ethereum――履歴肥大化とState肥大化の二重問題
Ethereumでは複数のデータが独立して増加する。
- historical blocks
- receipts
- account state
- contract storage
- historical state
Ethereumはすでにhistory pruning / expiryへ大きく方向転換している。
Gethでは古いblock bodiesやreceiptsをpruneしながらfull validationを維持できる。
EIP-4444を中心とするhistory expiryの思想も、
全ノードが全履歴を永久保存する必要はない
という方向を明確にしている。
しかしEthereumの本質的問題はhistoryだけではない。
State growth
現在有効なaccountやcontract storageはvalidationに必要である。
そのためEthereum roadmapでは、
- history expiry
- state expiry
- weak statelessness
- strong statelessness
が別々の課題として扱われている。
Ethereumは肥大化問題が大きい一方、
肥大化問題をprotocol architectureそのものによって解決しようとしているチェーン
でもある。
9. Solana――保存するより高速に流す設計
SolanaはBitcoinやCardanoとは思想が大きく異なる。
validatorには高性能CPU、大容量RAM、複数の高速NVMeなどが要求される。
Ledgerについても全履歴を無制限にvalidatorが保持するのではなく、古いデータを削除していく運用が前提になる。
つまり、
全validatorが全歴史を永久に保持する必要はない
という設計思想である。
これは高TPSチェーンとして合理的だが、完全履歴は、
- RPC
- indexer
- archival infrastructure
- 外部ストレージ
などへ移される。
したがってSolanaでは、
validator storage
と
ecosystem-wide archival storage
を区別する必要がある。
さらにSolanaの場合、storage容量だけでなくRAM、CPU、network bandwidth、NVMe性能などの総合的なnode operating costが高い。
そのため長期的には、
チェーン肥大化そのものより、ノード運用コストによるcentralization圧力
が重要な問題になる。
10. Sui――大量データをpruning前提で管理
Sui公式資料では、通常ノードと履歴保存ノードの容量差が非常に大きい。
公開資料の一例では、
| Sui storage | 容量 |
|---|---|
| Validator | 約250〜400GB |
| Pruned Full Node | 約2.5TB |
| Unpruned Full Node | 約16TB |
| Full-node snapshot | 約1.6TB |
| Checkpoint bucket | 約30TB |
またunpruned full nodeでは負荷に応じて数十GB/day規模でデータが増える例が示されている。
仮に、
- 10GB/day → 約3.65TB/年
- 40GB/day → 約14.6TB/年
となる。
Suiはこの問題を前提としてpruningを重要な設計要素にしている。
さらにstorage feeを徴収し、object削除時にstorage feeの大部分をrebateする仕組みを持つ。
つまりSuiは、
「ストレージは有限資源である」という前提をprotocol economicsにも組み込んでいる
点が特徴的である。
11. 評価軸を変えると順位も変わる
チェーン全体のデータ生成量を抑えられるか
良い順の概念評価:
Bitcoin > Cardano現行 > Ethereum > Sui ≈ Solana
通常validatorが大量履歴を抱えずに済むか
概念的には、
Bitcoin > Cardano > Ethereum > Sui > Solana
に近い。
古い履歴を通常ノードから切り離すarchitecture
ここでは、
Solana ≈ Sui > Bitcoin > Ethereum > Cardano
となる。
Cardanoは現在のデータ生成量が比較的小さいため問題が表面化しにくいが、高throughput時代を考えるとこの弱点は重要になる。
12. Cardanoをどう評価するべきか
Cardanoは、
現在の低肥大化チェーン
とは評価できる。
しかし、
肥大化対策が完成したチェーン
とはまだ評価できない。
現行Praosでは、
- EUTXO
- 比較的低いthroughput
- Mithril
によって問題が小さく抑えられている。
しかしLeiosでcapacityが30〜65倍級に拡大すれば、
- historical block storage
- Cardano DB
- DB Sync
- indexer
- explorer
- archival availability
- SPO SSD容量
- snapshot size
- bootstrap infrastructure
が本格的な課題になる可能性がある。
13. Cardanoには構造的な強みもある
CardanoがEthereumより有利な点の一つがEUTXOである。
Ethereumはglobal stateを更新するAccount型である。
CardanoはUTXOを消費して新しいUTXOを生成する。
そのため概念上、
過去のtransaction history
と
現在validationに必要なledger state
を分離しやすい。
したがってCardanoは、
「現在pruningが十分ではないから、将来的にもpruningが困難」
という意味ではない。
むしろ推測としては、
EUTXO + Mithrilは将来的なhistory pruningと相性が良い可能性がある。
Mithrilで認証されたstate snapshotを取得し、それ以前の古い履歴を別のavailability layerへ移す構成は技術的に自然である。
14. 肥大化問題の本質は分散性
最終的に重要なのはストレージ容量そのものではない。
Node Cost → Node Count → Decentralization
という連鎖である。
| Chain | 肥大化・ノードコストによる分散性リスク |
|---|---|
| Bitcoin | 非常に低い |
| Cardano現行 | 低い |
| Ethereum | 中程度 |
| Sui | 中〜高 |
| Solana | 高い |
Solanaは大容量RAMや高速NVMeなどを要求するため、家庭レベルのvalidator運営から遠くなりやすい。
一方Leiosは、throughputを引き上げながらSPO hardware requirementを比較的穏当な範囲に維持することを重要な設計目標としている。
つまりCardanoにとってLeiosの成功条件は、
TPSを増やすことだけではなく、SPO decentralizationを維持したままTPSを増やすこと
である。
15. 2030年前後のCardano:5段階シナリオ
以下の確率はCGTAによる推定であり、公式予測ではない。
| Scenario | 状況 | 推定確率 |
|---|---|---|
| S5 最良 | Leios + Mithril + history pruning / archival layerが整備され、SPOが1〜2TB級で長期運営可能 | 20% |
| S4 | Leios稼働後も実利用データ量はmoderate。SSD価格低下もありpruning未完成でも実用上大きな問題にならない | 35% |
| S3 | Leios普及でDBが数TB級へ。大型SPOには問題ないが小規模SPO負担が増える | 30% |
| S2 | 高利用率が続き年間数TB規模で履歴が増加。archive/pruning整備が後追いになる | 12% |
| S1 最悪 | Leios高負荷とarchive設計遅延が重なりSPO運用コストが急増、集中化圧力が高まる | 3% |
中心シナリオはS4〜S3と考える。
Leios導入だけで直ちにデータ爆発が起こるわけではない。
むしろ、
Leiosが成功し、Cardanoが本当に大量利用されるほどstorage architecture改革の必要性が高まる
という構造である。
16. 最終ランキング
現在のチェーン肥大化耐性
- Bitcoin — S5
- Cardano — S4
- Ethereum — S3
- Sui — S2〜S3
- Solana — S2
ただし、
高TPS化した将来も同じ設計で長期間耐えられるか
という評価ではCardanoの順位は低下する。
EthereumとSuiはすでに、
全履歴を全ノードに永久保存させない
方向へarchitectureを移している。
Cardanoはまだこの部分を本格的に完成させていない。
17. CGTA再評価
今回の再調査では、Cardanoについて以前より少し厳しく評価する。
最大の理由は、Ouroboros Leiosの開発資料自身が、
現在のCardanoにはarchiving、sharding、pruningの包括的な仕組みがなく、永久storage requirementが課題になる
という問題を認識しているためである。
ただし、これは現在のCardanoが危険という意味ではない。
むしろ、
Leios以前には緊急性が低かった問題が、Leiosによる大幅なcapacity増加によって重要になる
と理解する方が正確である。
そしてCardanoには、
- EUTXO
- Mithril
- 分散型SPO
- Leios
という基盤がある。
そのため将来、
EUTXO + Mithril + history pruning + distributed archival
という構成へ発展すれば、Bitcoin型の高い検証可能性と、高throughputチェーンの処理能力の中間に位置する興味深いstorage architectureになり得る。
Cardanoにとって「チェーン肥大化」は現在の危機ではない。
しかし、Leiosが成功した未来では避けて通れない次世代スケーリング課題である。
参考情報源
- Ouroboros Leios GitHub — Challenges / Impact Analysis
https://github.com/input-output-hk/ouroboros-leios
- Ouroboros Leios Roadmap
https://leios.cardano-scaling.org/docs/roadmap/
- Cardano Developer Portal — Running Cardano / Mithril bootstrap
https://developers.cardano.org/docs/operators/node/running-cardano/
- Cardano Docs — Mithril
https://docs.cardano.org/developer-resources/scalability-solutions/mithril
- Bitcoin Core
https://bitcoincore.org/
- Bitcoin.org — Bitcoin Core pruning関連資料
https://bitcoin.org/
- Geth — History Pruning
https://geth.ethereum.org/docs/fundamentals/historypruning
- Geth — Archive Node
https://geth.ethereum.org/docs/fundamentals/archive
- Ethereum.org — Statelessness Roadmap
https://ethereum.org/roadmap/statelessness/
- Solana / Agave Validator Requirements
https://solana.com/
- Sui Documentation — Sui Storage
https://docs.sui.io/develop/sui-architecture/sui-storage
作成日:2026-08-12 JST Cardano Epoch:648