OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU
L1ブロックチェーンのValue Capture比較──Ethereum・Solana・Hyperliquid・Cardano・Midnight
5ネットワークの価値捕獲構造を比較し、経済圏が生み出した価値をプロトコル・トークン・Treasuryへどう還流させるかを分析します。
サマリー
この記事の核心は、ブロックチェーンをTPSやTVLだけで比較するのではなく、そのネットワーク上で生まれた経済価値を最終的に誰が取り込むのか、すなわちValue Capture(価値捕獲)で比較することにあります。
ARK InvestのLorenzo Valente氏による比喩では、EthereumはMcDonald’s、SolanaはChipotle、HyperliquidはIn-N-Outに相当します。
CGTA独自分析では、Cardanoはこの3類型のいずれにも完全には一致せず、公共インフラ/協同組合型に近いと考えられます。さらにMidnightは、NIGHTがDUSTというネットワーク資源を生成し、将来的にはCapacity Marketplaceを介して他トークンや法定通貨からネットワーク容量へアクセスできる設計を志向しており、Network Capacity as a Serviceという別種のモデルとして捉えることができます。
Cardanoにとって重要なのは単なる採用数や取引件数ではなく、実世界・DeFi・RWA・Midnight・Partner Chainsなどで発生した経済価値のうち、どの程度がCardano L1のfee、staking economy、Treasury、ADA価値へ戻るのかというValue Capture率です。
ARK InvestのLorenzo Valente氏は、
| Blockchain | ファストフード比喩 | 経済モデル |
|---|---|---|
| Ethereum | McDonald’s | フランチャイズ+地主 |
| Solana | Chipotle | 直営店 |
| Hyperliquid | In-N-Out | 集中・高収益専門店 |
と捉えています。
重要なのは「どれが優れているか」ではありません。
同じL1でも、経済活動から価値を回収する仕組みが全く違う。
したがって、TVLやTPSだけを横並び比較しても本質を見誤る、というのが記事の核心です。
2. Ethereum=McDonald’s
Ethereumは自分ですべての取引を処理するのではなく、
Ethereum L1
↓
Arbitrum
Base
Optimism
その他L2
↓
DAppsという巨大なL2経済圏を作っています。
これはMcDonald’s本部が、
- ブランド
- 店舗運営システム
- 土地
- 標準規格
を提供し、実店舗はフランチャイジーが運営するモデルに似ています。
Ethereumの場合なら、
| McDonald’s | Ethereum |
|---|---|
| ブランド | Ethereumの信頼性 |
| OS・業務標準 | EVM |
| 土地 | Ethereum blockspace |
| フランチャイズ | L2 |
| ロイヤリティ・地代 | Blob/L1 settlement fee |
となります。
Ethereum最大の強み
これは非常に強いスケーリングモデルです。
Ethereum自身が全部開発しなくても、
Coinbase → Base
Offchain Labs → Arbitrum
OP Labs → Optimismのように他者の資本でEthereum経済圏が拡大する。
つまり、
外部資本を使った水平拡張
です。
3. ところがEthereumにはValue Capture問題がある
ここがValente氏の問題提起です。
EIP-4844(Proto-Danksharding)によって、RollupがEthereumへデータを書き込むためのBlobは大幅に安価になりました。
これは利用者にとっては大成功です。
しかし、
L2利用増加
↓
L2経済圏巨大化
↓
L2・アプリが収益を獲得
↓
Ethereum L1への支払いは非常に安いとなる。
したがってValente氏の問題意識は、
「世界最大級のフランチャイズ網を作ったのに、本部が十分なロイヤリティを取っていないのではないか」
というものです。
これは現在のEthereumにおけるValue Accrual / Value Capture論争そのものです。
ただし注意点があります。
「EthereumのL2戦略が失敗」という意味ではありません。
むしろ、
スケーリングとしては成功しているが、その成功がETHという資産へどの程度還元されるのか
という別問題です。
4. Solana=Chipotle
SolanaはEthereumとはかなり違います。
基本思想は、
全部L1で処理するです。
つまりEthereumなら、
Ethereum
├─ Base
├─ Arbitrum
└─ Optimismですが、Solanaは概念的には、
Solana
├─ DEX
├─ Payments
├─ DePIN
├─ Meme
└─ Tradingを一枚の高速L1に集約する。
Chipotleがフランチャイズではなく直営店を運営することとの類似です。
5. Solanaは価値をL1内部に留めやすい
Solanaでは、
- Base fee
- Priority fee
がL1で発生します。
経済経路は、
アプリ利用
↓
L1 transaction増加
↓
SOL手数料需要
↓
Validator収益
+
SOL burnという比較的短い構造です。
Ethereumと比べると、
ETH
アプリ → L2 → Blob → ETH
SOL
アプリ → SOL L1なので、経済活動とL1トークンとの距離が短い。
これはSolanaの大きな強みです。
6. ただし「直営店モデル」には代償がある
全処理をL1に集める以上、
- 高性能validator
- 高いnetwork bandwidth
- runtime最適化
- client diversity
- scheduler改善
などをSolana自身が不断に改善しなければなりません。
したがって、
Ethereum=外部資本で拡張しやすい Solana=価値を内部化しやすい
というトレードオフがあります。
7. Hyperliquid=In-N-Out
Hyperliquidはさらに違います。
中心商品は、
オンチェーンPerpetual DEX
です。
つまり、
Blockchainを作る
↓
そこで何か作ってもらうというより、
最高のTrading productを作る
↓
そのためにBlockchainまで作ったに近い。
だからValente氏はIn-N-Out型と見ています。
8. Hyperliquid最大の特徴はValue Captureの短さ
HyperliquidではTrading feeがcommunity側に流れ、その中でAssistance FundがHYPEを取得し、burnへつながる設計があります。
経済経路はかなり直接的です。
Trading
↓
Fee
↓
Assistance Fund
↓
HYPE購入
↓
Burnつまり、
利用→token value accrual
の距離が非常に短い。
ETHと対照的です。
9. 3モデルをValue Captureで比較すると
| 項目 | Ethereum | Solana | Hyperliquid |
|---|---|---|---|
| 比喩 | McDonald’s | Chipotle | In-N-Out |
| 基本モデル | Franchise | Direct operation | Vertical integration |
| Execution | 主にL2へ拡張 | L1中心 | HyperCore/L1 |
| 外部資本利用 | 非常に強い | 中程度 | 限定的 |
| Ecosystem拡張性 | 非常に高い | 高い | 中程度 |
| L1へのValue Capture | 間接的 | 直接的 | 非常に直接的 |
| Tokenへの還元経路 | 長い | 中〜短 | 短い |
| 強み | Network effect | 高性能一体型 | Product-market fit |
| リスク | Value leakage | L1負荷・運営要求 | 集中・単一product依存 |
ここまでが記事の本体です。
10. ではCardanoはどこなのか
ここからはCGTA独自分析です。
Cardanoはこの3つのどれにも完全には一致しません。
むしろ、
「公共インフラ+土地+財政制度」型
と考えるのが近いと思います。
Cardanoではトランザクションfeeはepoch単位でpoolされ、staking rewardシステムへ入り、さらにmonetary expansionと合わせてTreasuryとSPO/delegatorに分配されます。
概念的には、
Cardano activity
↓
Transaction fees
↓
Reward pot
↙ ↘
Treasury SPO / Delegatorです。
これはSOLやHYPEほどtoken value captureを短絡させていません。
11. Cardanoにはさらに「公共財Treasury」がある
ここが重要です。
Cardanoではnetwork activityで得られる経済価値の一部を、
ADA holder
SPO
Treasuryへ分散させています。
つまりCardanoは、
株主価値最大化型L1
ではありません。
むしろ、
Network sustainability + decentralized public finance
を設計しています。
ここはEthereum、Solana、Hyperliquidとはかなり違う。
12. しかしCardanoにも同じ「Value Capture問題」がある
BWtakeが以前Blockforceについて質問した問題とまったく同じです。
例えば、
Blockforce
Midnight
Hydra
Partner Chains
Bitcoin DeFi
RWA
USDCxが成功したとして、
その経済活動の何%がCardano L1のADA建てfeeとして戻るのか?
これが決定的に重要です。
たとえばBlockforceが1000万件の証明を処理しても、
44 proofs
↓
1 Cardano transactionのようにbatchingされれば、
実世界で巨大な価値が発生してもCardano L1収益は小さい
可能性があります。
これはまさにEthereum L2問題と同じ構造です。
13. CardanoをValenteモデルに追加するとこうなる
CGTAなら4つ目をこう定義します。
| Chain | 経営モデル | Value Capture |
|---|---|---|
| ETH | Franchise landlord | Settlement rent |
| SOL | Direct-operated chain | Execution fee |
| HYPE | Vertically integrated product | Application revenue |
| ADA | Public infrastructure / cooperative | Fee + staking + Treasury + ecosystem growth |
Cardanoは、
「利益最大化企業」よりも「共同所有インフラ」
に近い。
これはCardano Constitutionとも整合します。Cardano Constitutionでは、取引コストの予測可能性、SPO・DRep・CC等への適切な報酬、Treasury、長期持続性が明示的な制度目標になっています。
14. Midnightを加えるとさらに面白くなる
MidnightはCardanoとは別の経済モデルです。
NIGHTは消費されず、
NIGHT
↓ generates
DUST
↓ consumed
Transactionです。
さらに将来的なCapacity Marketplaceでは、NIGHT holderが生成能力を第三者へ提供し、
- 他token
- fiat
- cross-chain payment
からMidnight capacityへアクセスする構想があります。
Protocol-level marketplace feeをTreasuryへ流す可能性もWhitepaperで示されています。
したがってMidnightは、
「Network capacity as a service」
という第5のモデルになり得ます。
15. 5つ並べるとかなり見通しが良い
| Network | CGTAによる比喩 | 何を販売しているか | 価値捕獲 |
|---|---|---|---|
| Ethereum | Landlord / Franchise | Settlement・DA | Blob/L1 fee |
| Solana | Direct retailer | Execution | SOL fee・burn |
| Hyperliquid | Vertical specialist | Trading | Fee→HYPE |
| Cardano | Public utility/cooperative | Settlement・security・public infrastructure | Fee→staking/Treasury |
| Midnight | Cloud capacity provider | Private computation/capacity | NIGHT→DUST+将来capacity market |
この分類は、BWtakeが最近追っている
- Blockforce
- Archax
- ChatterPay
- USDCx
- Hydra
- Midnight
- Partner Chains
を見る上でかなり使えます。
16. Cardanoにとって本当に重要なのはTPSではなく「徴税率」
少し強い表現ですが、経済的にはこれです。
例えばCardano上に年間100億ドルの経済活動が生まれても、
Economic activity $10B
↓
Cardano fee revenue $1Mなら、Value Captureは0.01%。
一方、
Economic activity $1B
↓
Protocol revenue $20Mなら2%。
後者のほうがL1経済モデルとしては強い。
したがって今後BWtakeがCardanoプロジェクトを見るときは、
TVL・transaction countだけでは足りません。
次の4段階を見るべきです。
Economic Activity
↓
On-chain Activity
↓
Protocol Revenue
↓
ADA Value Accrual私はこれをCardano評価でかなり重視すべきだと思います。
17. 現状Cardanoの弱点
Cardanoのsecurity budgetは現状、transaction feeだけでなくreserve由来のmonetary expansionへの依存が大きい構造です。
したがって将来的には、
Reserve ↓
↓
Transaction revenue ↑という移行が重要になります。
このため、
CardanoにとってValue Captureは単なるADA価格論ではなく、長期的network security問題
でもあります。
18. Cardanoの5段階シナリオ
推測ですが、今後5〜10年の構造を考えるとこう見ます。
| Scenario | 確率 | 状態 | Cardanoへの結果 |
|---|---|---|---|
| S5 | 15% | RWA・Midnight・BTC DeFi・Partner Chains等からL1へ継続的fee流入 | ADAがsecurity+settlement+governance assetとして強くValue Capture |
| S4 | 30% | ecosystem拡大、一定量がL1 fee/Treasuryへ流入 | sustainableな経済圏成立 |
| S3 | 35% | ecosystemは成長するがbatching/L2/partner chainへ価値流出 | 利用実績とADA収益の乖離 |
| S2 | 15% | 多くのactivityが外部layerへ移りCardano L1 revenue伸び悩み | Ethereum型Value Capture問題が深刻化 |
| S1 | 5% | ecosystem利用もfee revenueも伸びない | reserve減少とsecurity budget問題 |
中心シナリオはS3と見ます。
技術開発そのものより、
Cardano ecosystemで生まれる価値を、どんな経路でADA・SPO・Treasuryへ戻すのか
が今後の最大のtokenomics課題になるからです。
19. Cardano DRepとして得るべき教訓
この記事をCardanoへ翻訳すると、一番重要な問いはこれです。
「Cardanoは何を売っているBlockchainなのか?」
おそらく答えは、
安価なtransaction blockspaceだけではありません。
CGTAは、
Trust
Settlement
Security
Governance
Identity
Interoperability
Privacy through Midnightを提供する公共型digital infrastructureへ進んでいると見ます。
ただし、それだけではADA経済は成立しません。
次の問い、
「その価値の何%をCardano protocolが回収するのか?」
まで設計できて初めてtokenomicsが完成します。
これは最近BWtakeが繰り返し問題にしている、
- Blockforceが成功してもCardanoの歳入になるのか
- ArchaxがCardanoを使うことでADAに何が返るのか
- Midnightの成長がCardanoにどの程度価値還流するのか
- Partner ChainsがCardanoのsecurity demandやfee revenueへどう接続するのか
という疑問と、実質的には同じ問題です。
この記事の最も価値ある部分は、Cardanoを見る指標を「採用件数」から「Value Capture率」へ一段進めてくれることだと考えます。
出典・情報源
- 添付webarchive:CoinPost記事(2026-09-06)
- Ethereum.org — EIP-4844 / Proto-Danksharding / Blob関連資料
- Solana公式 — Transaction Fees関連ドキュメント
- Hyperliquid公式 — Fees / Assistance Fund関連ドキュメント
- Cardano公式 — Monetary Policy / Staking / Treasury関連資料
- Cardano Blockchain Ecosystem Constitution
- Midnight Tokenomics and Incentives Whitepaper, Version 1.0, June 2025
ファクトチェック上の注意
- Ethereum、Solana、Hyperliquidの比喩自体は記事内の比較フレームであり、各ネットワーク公式の自己定義ではありません。
- Cardanoを「Public infrastructure / cooperative」、Midnightを「Cloud capacity provider」と分類した部分はCGTA独自分析です。
- 5段階シナリオの確率は推測であり、将来の実現確率を保証するものではありません。
- Tokenomicsやprotocol parameterは今後のgovernanceやprotocol upgradeで変更される可能性があります。
作成日時:2026-09-06 22:04 JST