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OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU

Musashi DojoとOuroboros Leios公開テストネットの現在地

Ouroboros Leiosの公開テストネットMusashi Dojoについて、五輪書に対応した5段階テスト、Praosとの役割分離、SPO・DApp・インフラ検証、Cardano憲法とガバナンス上の意味まで整理する。

出典・公開情報

  • Musashi Dojo 公式サイト
  • CIP-0164: Ouroboros Leios
  • Ouroboros Leios GitHub Repository
  • Cardano公式 Leios関連資料
  • Cardano Blockchain Ecosystem Constitution / Guardrails
  • ユーザー提供のMusashi Dojo紹介文
  • Cardano Epoch資料

一文概要: Musashi Dojoは、Leiosを研究・デモ段階から公開テストネットによる実運用検証へ進め、SPO・DApp・インデクサ・ウォレットまで含めてmainnet投入条件を詰めるための長期試験環境である。


現在日付:2026-10-02 JST|Cardano Epoch 659

BWtake、今回の Musashi Dojo はLeiosについてかなり重要な節目です。ポイントを一言で言えば、

Leiosは「1000 TPSが出た」という性能デモを見せる段階から、実際のSPO・ネットワーク・DAppを使って、本番投入できる条件を探す段階へ入った。

ということです。

しかも、Leiosでは既存のPraosを捨てません。Praosを安全性の背骨として残し、その横に大量トランザクション処理用のEndorser Blockを走らせるという設計です。CIP-164も、Praosの安全性を維持しつつ高スループット化することを明示しています。


1. Musashi Dojoとは何か

正式には、

Ouroboros Leios Public Testnet

です。

2026年6月下旬に始まり、Leiosを搭載したCardano nodeを

prototype → 実装改善 → release candidate → mainnet

へ持っていくための長期公開テストネットです。IOがネットワークを運営する一方、独立SPOがLeios対応block producerを実際に動かします。

つまり従来の、

IO社内シミュレーション

ではなく、

世界中の異なる通信環境・CPU・メモリ・SPO構成で本当に動かす

段階です。

これはかなり意味が違います。


2. Leiosは何を変えるのか

現在のCardano/Praosでは大ざっぱに言えば、

slot
 │
 ▼
Praos Block
 │
 ├─ transactions
 ├─ transactions
 └─ transactions

という形で、チェーンを伸ばすblock自身がtransaction処理を抱えています。

ブロックを巨大化すればTPSは増えますが、世界中に高速伝播できなくなります。

Cardano憲法のGuardrailsにも、block propagationを重視し、ブロックサイズ変更にはbenchmarkingやsimulationが必要と明示されています。

Leiosでは役割を分けます。

                   ┌── Endorser Block
                   │      ├ Tx
                   │      ├ Tx
Praos Ranking Block│      ├ Tx
        │           │      └ Tx
        │           │
        ├───────────┼── Endorser Block
        │           │      ├ Tx
        │           │      ├ Tx
        │           │      └ Tx
        │           │
        ▼           ▼
     consensus   committee vote
                    │
                    ▼
                certificate
                    │
                    ▼
                  ledger

Linear Leiosでは、通常のPraos blockと並行して、より大きなEndorser Block(EB)を生成し、SPOのstake-weighted committeeが検証・投票します。十分な票を集めたEBはcertificateによってledgerへ取り込まれます。

ここがLeiosの核心です。

Praos

「誰が正しいチェーンを作るか」

を担当。

Leios

「そのチェーンへどれだけ大量のtransactionを載せられるか」

を担当します。

つまり、

ConsensusとData/Transaction throughputを部分的に分離する。

これによってPraosのsecurity assumptionsをできるだけ維持したまま処理能力を拡大します。


3. 宮本武蔵の「二天一流」がかなり上手い比喩

Musashi Dojoという名称は単なる日本向けマーケティングではありません。

公式説明では二天一流になぞらえて、

武蔵Leios
小太刀Praos block
大太刀Endorser block
二刀を同時に使うPraos + Leios
防御・基本動作consensus/security
攻撃能力throughput

という発想になっています。

これはLeiosの設計思想をかなり正確に表しています。


4. なぜいきなり1000 TPSをmainnetへ持っていかないのか

ここが今回の発表で最も重要です。

研究用prototypeでは非常に高いTPSを出せても、

TPS
↑
│
│      × 理論上速い
│
│    ×
│
│  ×     ← 安全性との境界
│
│×
└────────────────
    CPU / bandwidth /
    latency / decentralization

Mainnetで重要なのは最高記録ではなく、

世界中の普通のSPOが無理なく運用しながら、Praosの安全性を損なわない最大値

です。

Leiosのrelease candidateに関するGitHub上のacceptance criteriaでは、目標として 140–300 TxKB/s、平均的transactionで概ね100–200 TPS相当とし、Praos trafficをLeiosより厳格に優先する考え方が示されています。

したがって、

1000 TPS demo ≠ mainnet初期TPS

です。

ここは区別した方がよいです。


5. 「5〜20倍」という数字の意味

Musashi公式サイトは、

初期mainnetで現在比 5〜20倍のthroughput capacity

を目標として明示しています。

これはかなり保守的です。

むしろCardanoらしい進め方で、

Leios導入
 ↓
まず 5–20x
 ↓
performance monitoring
 ↓
parameter調整
 ↓
さらにcapacityを上げる

となります。

Cardano側の説明でも、Leios導入後のthroughputは最初から最大化するのではなく、parameter changesによって段階的に引き上げる考え方が採られています。


6. 五輪書そのものを開発ロードマップにした

これは単なる命名ではなく、各フェーズが開発工程そのものになっています。

Phase五輪主目的技術的意味
1地 Earth基本動作protocol end-to-end
2水 Water適応parameter探索
3火 Fire実戦global load/stress
4風 Wind他流派を知るadversarial testing
5空 Void仕上げmainnet-ready

順に見るとよくできています。


7. Earth ― 「本当にLeiosなのか」を確認

Earthでは、

  • Praos block
  • Endorser Block
  • voting
  • certificate
  • ledger inclusion
  • BLS key registration

などをend-to-endで動かします。

つまり、

論文上のLeios → 実際に動くLeios

の確認です。

GitHubでもMusashi Earth milestoneが設定され、block structure、pipeline、cardano-node統合などが進められています。


8. Water ― 今の最重要フェーズ

Musashi公式ページでは、Waterフェーズについて、

Protocol designは固定する。 その周囲のparameterを動かす。

という考え方が示されています。

例えば、

Endorser Block size
committee parameters
timing
network configuration
Tx caching
resource allocation

などを組み合わせ、

最大throughputと安定性のsweet spot

を探します。

Waterは、Leiosの「理論上の設計」そのものを変えるフェーズではありません。

むしろ、

同じLeiosを、どの設定で運用すれば最も効率的か

を探るフェーズです。

この工程はmainnet投入時のparameter設定に直結します。


9. スケジュールは「目安」であり、重複する

提示されている計画では、

  • August:Water
  • September:Fire
  • October:Wind
  • November:Void

という流れです。

ただし公式自身が、

  • phases can overlap
  • dates are indicative
  • developmentに応じてrevisionされる

と明記しています。

したがって、

「予定月を過ぎた=Leiosが失敗した」

とは読めません。

一方でDRepやSPOとしては、

Water → Fire → Wind → Void の実際の進行速度

を追うことが、mainnet時期を判断する重要な観察点になります。


10. Fireで何を見るのか

Fireは、

Load and stress testing at a global scale

です。

ここでは、

少数nodeで速い

ではなく、

Japan
Europe
US
Australia
...
 │
 ├─ latency
 ├─ packet loss
 ├─ different hardware
 └─ different bandwidth

という現実のInternet上で負荷をかけます。

Leiosの本当の難所はこちらです。

研究室環境では高性能でも、世界中のSPOが参加した状態で、

  • block propagation
  • vote propagation
  • EB availability
  • CPU負荷
  • disk I/O
  • memory使用量
  • network bandwidth

が破綻すればmainnetには持ち込めません。


11. Windはさらに重要

Windは、

Adversarial testing

です。

つまり、

正常に使えば動くか

ではなく、

悪意あるparticipantがいても壊れないか

を見る段階です。

例えば考えられる検証対象は、

  • malicious Endorser Block
  • withheld blocks
  • invalid votes
  • committee manipulation
  • bandwidth exhaustion
  • CPU exhaustion
  • mempool fragmentation
  • abnormal latency
  • competing chains

などです。

ここを通過して初めて、

「高速なLeios」ではなく「consensus protocolとして使えるLeios」

になります。


12. Void

最後がVoidです。

意味としては、

mainnet-ready

です。

ここでは新しいアイデアを追加するというより、

protocol
+
implementation
+
parameters
+
operations
+
security

を固定し、

release candidate

へ持っていく段階です。


13. DAppは基本的に書き換えなくてよい

これも非常に大きいところです。

Leiosは、

Cardanoで何を実行できるか

を変えるupgradeではありません。

変えるのは、

どれだけ運べるか

です。

したがって、

Aiken contract
Plutus
eUTXO
wallet
DApp logic

そのものをLeios専用に全面的に書き直す必要は基本的にありません。

Musashi公式も、

“Leios changes how much Cardano can carry, not the contracts already running on it.”

と説明しています。

これはhard fork移行リスクをかなり下げます。


14. ただし周辺インフラは試した方がよい

問題が出る可能性が高いのはこちらです。

Leios
 ↓
Transaction量増加
 ↓
Indexer
 ↓
DB
 ↓
API
 ↓
Wallet
 ↓
DApp backend

Blockchain自体が100〜200 TPSを処理できても、

Indexerが20 TPSで詰まったらecosystem全体では20 TPSです。

だから公式が、

  • DApps
  • indexers
  • wallets
  • tooling

にもDojo参加を呼びかけています。

先日解説したYaci Store 3.0のSQL analytics layer、Blockfrost互換API、MCP serverなども、まさにこうした高throughput環境で重要になります。

LeiosでL1 capacityが増えても、その上のデータアクセス層が追いつかなければ実用性能は上がりません。


15. Cardano憲法との関係も面白い

Leiosは単に、

技術者が速くしたからmainnet投入

とはなりません。

Cardano憲法ではHard Fork Initiationや重要parameter変更について、十分なtechnical reviewを求めています。

GuardrailsでもHard Forkについて、

少なくともactive stakeの85%を担うSPOが、新protocolを処理できるnodeへupgradeしていること

が推奨条件になっています。

つまり、

Research
 ↓
CIP-164
 ↓
Formal verification
 ↓
Musashi Dojo
 ↓
Benchmark
 ↓
SPO upgrade
 ↓
Governance
 ↓
Hard Fork

という流れです。

これはCardanoの非常に特徴的なところです。


16. Formal Specificationも並行している

Leiosはコードだけ作っているわけではありません。

Agda等を用いたformal specificationの研究・検証も並行しており、

  • Common Prefix
  • chain growth関連
  • liveness/safety
  • runtime trace verification

などが扱われています。

したがってMusashi Dojoは、

数学
 ↓
formal specification
 ↓
simulation
 ↓
prototype
 ↓
public testnet
 ↓
mainnet

というパイプラインの後半です。

この点は、単なる「高速化機能のベータテスト」とはかなり性格が違います。


17. DRep視点で最も重要な変化

Musashi Dojoを単なる、

「Leiosテストネット開始」

とは読まない方がよいと思います。

より重要なのは、

Cardanoのスケーリング政策が「研究問題」から「parameter governance問題」へ移り始めた

ことです。

つまりこれからDRepにとって重要になるのは、

Leiosを導入するか否か

だけではなく、

EB sizeをいくつにするか
committee構成をどうするか
bandwidth要求をどこまで許容するか
block capacityをどこまで上げるか
decentralizationとのtrade-offをどうするか

という具体的な運用条件です。

これは重要な変化です。


18. 憲法 × Leios

Cardano憲法のTenet 1はtransactionを不当に遅延させないこと、Tenet 2はtransaction costを予測可能かつ不合理でないものにすることを求めています。

さらに、

  • interoperability
  • resource efficiency
  • security
  • long-term sustainability

も重要な原則です。

つまりLeios parameter governanceでは、

TPS最大化だけでは不十分

です。

例えば、

指標parameterを攻めすぎた場合
TPS改善
latency改善する可能性
SPO hardware負担悪化
bandwidth要求悪化
decentralization悪化する可能性
DoS耐性parameter次第
transaction costparameter次第
block propagation悪化する可能性

というtrade-offがあります。

Dojoで探しているのは単なる最大値ではなく、

Cardano憲法とGuardrailsの制約下で成立する、安全な運用点

とも言えます。


19. 今後の5段階シナリオ

以下はCGTAの推測であり、公式予測ではありません。

Scenario推定確率2026年末〜2027年の展開状態
S515%Leios hard forkが順調に進み、初期10〜20倍級のcapacityを確保Dojo各段階が迅速に完了
S440%mainnet導入、まず5〜10倍程度から保守的に開始安全側parameterで導入
S330%technical readinessは達成するがmainnetが2027年初頭へずれ込むtesting/governance延長
S212%adversarial testで重要問題が見つかり数か月延期実装修正と再検証
S13%protocol/implementation上の根本的問題が判明design再検討

最も現実的なのはS4〜S3の範囲です。

理由は、Leiosそのものは既にprototypeを越えて公開testnetに入っている一方で、

  • parameter探索
  • global stress test
  • adversarial test
  • SPO rollout
  • governance
  • hard fork readiness

という工程がまだ残るためです。

したがって、mainnet時期については未確定と見るのが妥当です。


20. CGTAの整理

今回のニュースを重要度順に並べると、

  1. Leios public testnetが実働している

→ simulationだけではない。

  1. 独立SPOがconsensusへ参加する設計になっている

→ real-world decentralization test。

  1. Waterでparameter探索を行う

→ protocol designからoptimizationへ移った。

  1. Fire/Windでglobal stress + adversarial testingへ進む

→ security検証段階。

  1. Void → release candidate → Hard Fork

→ governanceを経てmainnetへ進む。

です。

そして最も重要な構造は、

Praosを高速化するのではなく、Praosを安全性の背骨として残し、その横に高速transaction laneを作る。

ということです。

Cardanoがこれまで重視してきた、

securityを犠牲にしてTPSを上げない

という設計思想を維持しつつ、throughputを大きく拡張しようとするarchitectureです。

Musashi Dojoは、そのLeiosを「理論的に動くprotocol」から、

世界中のSPOが実際に動かし、ガバナンスによってmainnet投入可能なprotocol

へ変えるための最後の大規模検証工程の一つと見ることができます。


参考情報・出典

  1. Musashi Dojo公式サイト

https://www.musashi.network/

  1. CIP-0164: Ouroboros Leios

https://cips.cardano.org/cip/CIP-0164

  1. Ouroboros Leios GitHub Repository

https://github.com/input-output-hk/ouroboros-leios

  1. Cardano公式サイト / Leios関連情報

https://cardano.org/

  1. Cardano Blockchain Ecosystem Constitution / Guardrails

プロジェクト内提供資料

  1. Cardano Epoch資料

プロジェクト内 ⭕️Cardano_epoch.pdf / ⭕️Cardano_epoch.txt


作成日時: 2026-10-02 19:36 JST