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OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU

AIはブロックチェーン開発者負担を救えるか――AI Coding・Verification・Formal Methodsが変えるProtocol開発

EthereumやSolanaなど主要L1で増大する開発複雑性に対し、AI coding agent、AI verification、formal methods、自動テストがどこまで負担を吸収できるかを整理します。

現在日時:2026-08-19 JST

1. 結論

EthereumやSolanaなど主要L1では、今後Protocol Complexityが大きく増加すると考えられる。

しかし同時に、プログラムを作る側もAIによって急速に進化する。

今後は、

人間のprogrammerがAI補完を使う

という段階から、

AI agent群が実装・テスト・レビュー・修正まで進め、人間が仕様設計と最終承認を担う

方向へ進む可能性が高い。

したがって、ブロックチェーン開発者不足の問題は単純な「人手不足」ではなくなる。

将来の中心課題は、

何を作るべきかを正しく仕様化し、AIが作ったものが安全であることを検証できるか

へ移っていく可能性がある。


2. AIが変える開発工程

従来のsoftware developmentでは、多くの工程を人間が直接担当してきた。

今後はAI agentがその多くを担う可能性がある。

開発工程現在今後のAI化
仕様理解人間中心AIがEIP、SIP、specを解析
実装人間+補完AI agentが大部分を実装
Unit test人間作成中心AIが自動生成
Integration testCI+人間AIがscenario生成
Fuzzing専門家中心AIがattack surfaceを探索
Client差分比較手作業+CIAIが自動差分解析
Security review人間専門家AI一次レビュー+人間最終判断
Bug修正人間AIが再現、修正、再テスト
PR review人間中心AI self-review+人間承認

AI coding agentは単なるautocompleteではなく、

Issue
  ↓
Repository解析
  ↓
実装計画
  ↓
Code変更
  ↓
Test
  ↓
修正
  ↓
Pull Request

まで自律的に行う方向へ進んでいる。


3. AIは開発者負担を大きく軽減する可能性がある

EthereumやSolanaの開発負担が増える最大の理由の一つは、変更範囲が広くなっていることである。

例えば一つのProtocol変更が、

  • Consensus
  • Execution
  • Networking
  • Wallet
  • Fee
  • Mempool
  • Security
  • Client compatibility

へ波及する。

AIはこのような大量の依存関係を追跡する作業に向いている。

将来的には、

Protocol proposal
      ↓
AI dependency analysis
      ↓
影響範囲抽出
      ↓
複数clientへpatch生成
      ↓
test generation
      ↓
regression check

という流れが可能になる。

このため、単純なcoding burdenは大幅に低下する可能性がある。


4. しかしAIは「複雑性を生産する能力」も高める

ここが重要である。

AIによって実装コストが下がると、人間は必ずしもsystemを単純化するとは限らない。

むしろ、

AIで開発速度上昇
      ↓
実装可能な機能数増加
      ↓
Protocol Complexity増加
      ↓
さらにAIが必要

という循環が起こる可能性がある。

例えば、AIによって開発コストが従来の20%になった場合、

「同じ機能を5分の1のコストで作る」

だけではなく、

「従来なら不可能だった5倍複雑な機能を作る」

方向へ進む可能性がある。

つまり、

AIはComplexityを減らす技術であると同時に、Complexityを増やす技術にもなり得る。

これは今後のsoftware engineering全体に共通する重要な問題である。


5. BlockchainではAI生成コードのリスクが特に大きい

通常のWeb serviceでbugが発生しても、rollbackやhotfixで復旧できる場合が多い。

しかしL1 blockchainでは事情が異なる。

Consensus関連のbugは、

AI-generated bug
       ↓
client Aとclient Bで異なる挙動
       ↓
state divergence
       ↓
consensus split

につながる可能性がある。

そのためBlockchainでは、

AI Coding

だけを高速化することは危険である。

同時に、

AI Verification

を発達させる必要がある。


6. AI CodingよりAI Verificationが重要になる

今後のBlockchain開発では、AI coding agentだけでなく、独立したverification agentが重要になる。

理想的な開発構造は次のようになる。

Specification Agent
        ↓
Implementation Agent A
Implementation Agent B
        ↓
Test Generation Agent
        ↓
Formal Verification Agent
        ↓
Adversarial / Fuzz Agent
        ↓
Cross-client Comparison Agent
        ↓
Human Core Developers
        ↓
Merge

一つのAIに、

  • 仕様作成
  • 実装
  • 検証

をすべて任せるのではなく、役割を分離する。

これは人間社会における、

設計
実装
監査

の分離と同じである。


7. 「AIが作り、別AIが壊す」構造

Securityでは特に、

Defender AIとAttacker AIを競わせる

構造が重要になる可能性がある。

例えば、

Developer AI
      ↓
Protocol implementation
      ↓
Adversarial AI
      ↓
Attack generation
      ↓
Bug発見
      ↓
Developer AI修正
      ↓
再攻撃

という自動loopが考えられる。

この方法は、

  • fuzzing
  • edge-case探索
  • invariant violation
  • economic attack
  • consensus divergence

などの発見に有効になる可能性がある。


8. Formal Methodsの価値はAI時代にむしろ上がる可能性

AIがcodingを大量生成する時代になると、

「コードを書けること」

自体の希少性は低下する。

その代わり、

「正しい仕様を定義できること」

の価値が上がる可能性がある。

Formal specificationが存在すれば、

Formal Specification
        ↓
AI Implementation A
AI Implementation B
        ↓
Formal Verification
        ↓
Specificationとの一致確認

という構造を作れる。

これはAI時代と非常に相性が良い。

AIに自然言語だけで、

「正しいEthereum clientを作って」

と命令するより、

数学的・形式的な仕様が存在する方が検証可能性が高い。


9. CardanoのFormal MethodsがAI時代に再評価される可能性

これはCGTAの推測である。

Cardanoは従来から、

Research
↓
Specification
↓
Formal methods
↓
Implementation
↓
Testing

という開発思想を重視してきた。

従来、この方法は、

  • 開発が遅い
  • academicすぎる
  • 実装速度で不利

と批判されることもあった。

しかしAIがimplementation costを大幅に下げると、状況が変わる可能性がある。

AI時代には、

実装速度より、正しい仕様を持っていること

の方が重要になる可能性があるからである。

形式仕様が存在すれば、

  • AI実装
  • 別client実装
  • test生成
  • formal verification
  • regression verification

を自動化しやすくなる。

そのため、

AI時代にはFormal Methodsの価値がむしろ上昇する

可能性がある。

ただし、これは現時点では推測であり、確定事項ではない。


10. EthereumとSolanaにもAI Verificationが必要になる

Ethereumではmultiple clientsが存在する。

SolanaでもAgaveとFiredancerなど複数client体制が進んでいる。

複数clientはsystemic riskを低減する一方、

Client A
=
Client B
=
Client C

を保証する必要がある。

AIはここで非常に有効になる可能性がある。

例えば、

同一block input
      ↓
複数client実行
      ↓
state transition比較
      ↓
差異検出
      ↓
AI原因解析

という自動verification systemが考えられる。

将来的には、Protocol upgradeごとに数百万から数十億のsimulation caseをAIが生成し、複数clientへ投入することも考えられる。


11. 人間のCore Developerの仕事はどう変わるか

2030年前後には、core developerの仕事そのものが変化する可能性がある。

現在:

仕様
↓
人間が実装
↓
人間がtest
↓
人間がreview

将来:

人間が設計原則を決める
        ↓
AIが仕様候補作成
        ↓
人間が仕様承認
        ↓
AI群が実装
        ↓
AI群がtest・攻撃・検証
        ↓
人間が最終判断

となる可能性がある。

つまりCore Developerは、

Coder

から、

Protocol Architect / Reviewer / Governor

へ近づいていく。


12. 不足する人材も変わる

AIによって単純なcoding capacityが増加すれば、不足する人材の種類も変わる。

将来重要になる可能性が高いのは、

  • Protocol architect
  • Cryptographer
  • Formal methods specialist
  • Security researcher
  • Specification engineer
  • Economic mechanism designer
  • AI-agent orchestrator
  • Governance specialist

である。

つまり、

何行コードを書けるか

ではなく、

system全体を理解し、安全な設計原則を定義できるか

が重要になる。


13. AI時代の新しいボトルネック

AIがcodingを高速化すると、ボトルネックは次のように移動する可能性がある。

Coding
  ↓
Specification
  ↓
Verification
  ↓
Governance

最終的には、

「作れるか」ではなく「作るべきか」

が最大の問題になる。

例えばAIが一週間で100個のEIPを実装できるようになっても、

Ethereumにその100個を導入すべきとは限らない。

むしろProtocol Complexityを増やしすぎる危険がある。


14. AIによるProtocol Complexity Inflation

今後起こり得る重要なリスクとして、

Protocol Complexity Inflation

が考えられる。

これは、

AIによって新機能の実装コストが低下し、必要以上にProtocolへ機能が追加される現象

である。

概念的には、

AI capability ↑
      ↓
Feature implementation cost ↓
      ↓
Feature proposals ↑
      ↓
Protocol Complexity ↑
      ↓
Verification burden ↑

となる。

したがってAI時代には、

何を実装できるか

より、

何を実装しないか

を決めるgovernance能力が重要になる。


15. 5段階シナリオ分析

以下は2026-08-19時点のCGTA推定である。

Scenario2030年前後推定確率
S5AI coding+formal verification+自動spec検証が成熟し、複雑性を管理可能20%
S4AI agentが開発負担の大部分を吸収、人間は設計・監査中心40%
S3AIで開発速度は上がるがComplexityも増え、負担軽減効果が相殺27%
S2AI生成コードによるbug・security incidentが増える10%
S1AI-driven complexityが検証能力を上回り、重大なprotocol failure3%

中心シナリオはS3〜S4と考える。

つまり、

AIによって開発者不足はかなり緩和されるが、Protocol Complexity問題そのものは残る

可能性が高い。


16. 前回の結論の修正

前回、

将来のBlockchain最大のボトルネックは、人間がProtocol全体を理解・検証できる限界

と整理した。

AIの進化を考慮すると、より正確には、

将来のボトルネックは「コードを書く能力」ではなく、「仕様を正しく定義し、AI群が作ったsystemが安全であることを検証し、どの変更を採用するか判断する能力」

になると考えられる。

つまり、

Human Coding
↓
AI Coding
↓
AI Verification
↓
Human Specification & Governance

へ役割が移動する。


17. 結論

AIはEthereumやSolanaの開発者負担を大幅に軽減する可能性がある。

しかしAIは同時に、

より複雑なProtocolを作れる能力

も高める。

したがって、

AIが開発者不足を解決する

だけではなく、

AIによってProtocol Complexity自体がさらに増える

可能性も考える必要がある。

今後重要になるのは、

  • AI Coding
  • AI Verification
  • Formal Specification
  • Formal Verification
  • Multi-client testing
  • Adversarial AI
  • Protocol Governance

の組み合わせである。

最終的にBlockchain開発の中心は、

人間がコードを書く世界
        ↓
AIがコードを書く世界
        ↓
AI同士が実装・検証し
人間が仕様と採否を決める世界

へ移行する可能性がある。

この世界では、最も重要な能力はprogramming speedではない。

正しい仕様を作り、複雑性を制御し、安全に進化させる能力

である。


Sources

  • GitHub Docs, Copilot coding agent / cloud agent

https://docs.github.com/en/copilot/concepts/agents/cloud-agent/about-cloud-agent

  • GitHub Blog, GitHub Copilot coding agent updates

https://github.blog/ai-and-ml/github-copilot/whats-new-with-github-copilot-coding-agent/

  • OpenAI, Introducing Codex

https://openai.com/index/introducing-codex/

  • OpenAI, Unrolling the Codex agent loop

https://openai.com/index/unrolling-the-codex-agent-loop/

  • METR, Early 2025 AI Experienced Open-Source Developer Study

https://metr.org/blog/2025-07-10-early-2025-ai-experienced-os-dev-study/

  • 金融庁「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会 報告書」

令和6年11月26日


Fact Check Note

  • AI coding agentは、repository解析、code変更、test、PR作成などを自律的に実行する方向へ進んでいる。
  • AIがsoftware engineering productivityを常に改善するとは現時点では断定できない。taskやdeveloper experience、tool maturityによって結果は異なる。
  • Blockchain consensus softwareでは、通常のapplication softwareよりもimplementation divergenceの影響が大きい。
  • 「AI Verification Agent」「Protocol Complexity Inflation」は本稿の分析上の概念であり、Ethereum・Solanaの公式用語ではない。
  • CardanoのFormal Methods重視がAI時代に有利になるという部分はCGTAの推測であり、確定事項ではない。
  • AIによる2030年前後の開発構造およびシナリオ確率はCGTAによる将来予測である。

作成年月日:2026-08-19 JST