OBSERVATION NOTE / MDFOOB-HU
Regulated FinanceのDLT覇権競争──Ethereum・Canton・Progmat・Hyperledger・Cardano・Midnightの戦略比較
制度レイヤーの下で6つのDLT陣営がどの領域を取りに行くのかを比較し、各陣営の勝ち筋と2032年までのシナリオを整理します。
サマリー
政府や規制当局が作ろうとしているのは、単一の「国家ブロックチェーン」ではない。
より本質的には、
- Regulation
- Identity
- AML/KYC
- 情報開示
- Settlement
- Cybersecurity
という制度・監督レイヤーを整備し、その下で複数のDLT・トークン化基盤が競争・接続する市場構造である。
この競争を単純な「L1戦争」と見ると本質を見誤る。
Ethereum/EVM、Canton、Progmat、Hyperledger、Cardano、Midnightは、それぞれ異なるポジションを取りに行っている。
| 陣営 | 基本戦略 | 狙っている地位 |
|---|---|---|
| Ethereum / EVM | 既に巨大な流動性・標準・開発者市場を持つ公開市場へTradFiを引き込む | 世界共通の公開金融決済層 |
| Canton | TradFiの制度・秘匿性・既存ワークフローを壊さずオンチェーン化する | 機関金融専用の共有台帳・相互運用層 |
| Progmat | 日本の法制度・銀行・証券・信託実務を先に押さえる | 日本のトークン化金融OS |
| Hyperledger / LFDT | 特定チェーンを支配せず、銀行・政府向けOSS部品を供給する | 金融DLTの共通技術基盤 |
| Cardano | Public chainの分散性を維持しながら規制資産をnative asset化する | 規制対応Public RWAチェーン |
| Midnight | ZKで「見せずに証明する」規制対応を提供する | 金融のPrivacy / Compliance Layer |
現時点ではEthereumとCantonが先頭集団にいると考えられる。
ただし両者は同じ戦略ではない。
- Ethereum:Public marketからTradFiを吸収する
- Canton:TradFiをそのままDLT化する
- Progmat:日本の制度・業務レイヤーを押さえる
- Hyperledger:どの陣営が勝っても使われる部品になる
- Cardano:Public decentralizationとregulated assetを両立させる
- Midnight:複数金融ネットワークから使われるPrivacy / Identity / Compliance Proof layerを狙う
最も可能性が高いのは、単一DLTによる勝者総取りではなく、複数のDLTと制度基盤が接続する「Hybrid Multi-DLT」である。
1. 政府が作るのは「制度レイヤー」
政府・規制当局が作ろうとしているのは、特定DLTそのものではない。
重要なのは次の制度レイヤーである。
Regulation
Identity
AML/KYC
情報開示
Settlement
Cybersecurityこの制度レイヤーが標準化されると、その下で各DLTが、
- どこまで規制適合できるか
- どれだけ秘匿性を確保できるか
- どれだけ流動性を集められるか
- 既存金融と接続できるか
- 国境を越えて相互運用できるか
を競う。
したがって、将来の競争軸は「TPSが高いか」だけではない。
むしろ、
Compliance × Identity × Privacy × Settlement × Liquidity × Interoperability
の総合戦になる。
2. Ethereum / EVM陣営
市場を先に作り、金融機関を後から参加させる
Ethereumの戦略は明快である。
規制金融のために専用チェーンを新たに作るのではなく、
既に巨大化したEthereum経済圏そのものを機関金融対応へ改良する
戦略である。
Ethereum陣営は、
- RWA
- Stablecoin
- Privacy
- Compliance
- L2
- Institutional DeFi
を組み合わせ、L1を最終決済層として利用しつつ、L2やアプリケーション層で業務特化する方向へ進んでいる。
構造
Ethereum L1
Trust / Final Settlement
│
┌────────────┼────────────┐
│ │ │
L2 Privacy RWA
│ │ │
高速処理 ZK/FHE/TEE ERC標準
│ │ │
└────────────┼────────────┘
│
Institutional Apps最大の武器
Ethereum最大の強みは、
Liquidity + Composability + Standards
である。
同一経済圏に、
- Stablecoin
- Tokenized Treasury
- RWA
- DEX
- Custody
- Oracle
- Wallet
- Lending
- Institutional DeFi
が存在する。
「資産もcashもmarketも既にそこにある」というネットワーク効果は極めて強い。
Privacy戦略
Ethereumの弱点はPublic chainゆえの情報可視性だった。
そのため現在は、
- ZK
- FHE
- TEE
- Privacy-focused L2
- Selective Disclosure
- KYC Proof
などを組み合わせ、機関金融の秘匿性要求へ対応する方向に進んでいる。
勝ち筋
世界最大のオンチェーン市場を金融機関がそのまま使えるようにする。
金融機関専用ネットワークを新たに作るのではなく、既存の巨大なオープン金融市場へTradFiを取り込むことがEthereumの基本戦略である。
3. Canton
Blockchainを金融機関側へ持っていく
CantonはEthereumとほぼ逆の戦略を取る。
Ethereumが、
新しいPublic marketへ来てください
という戦略なら、Cantonは、
今使っている金融市場を、そのままDLT化します
というアプローチである。
Cantonは最初から、
- 銀行
- 証券会社
- Custodian
- CSD
- 資産運用会社
- 市場インフラ
の要求から設計されている。
核心:Privacy-preserving interoperability
Cantonの重要な考え方は、
全参加者が同じ台帳を見る必要はないが、取引結果は同期できる
というものだ。
Bank A ─── Asset A
│
│ 必要な情報だけ共有
▼
Global Synchronizer
▲
│ 必要な情報だけ共有
│
Bank B ─── Cash Bこれは機関金融と非常に相性が良い。
銀行Aの顧客やポジションを、銀行Bや他の市場参加者へすべて見せる必要はない。
しかしasset legとcash legはatomicに同期できる。
Cantonの本当の狙い
CantonはCrypto市場を取ることより、
現在の世界金融市場そのものをオンチェーン化する
ことを狙っている。
対象は、
- Treasury
- Repo
- Collateral
- Securities Settlement
- Tokenized Deposits
- RWA
などである。
最大の武器
既存金融機関の信頼関係・秘匿性・業務フローを壊さないこと。
弱点
一方で、
- Retail liquidity
- Permissionless innovation
- Public DeFi
- Open developer ecosystem
ではEthereumに劣る。
4. Progmat
日本の制度と実務を押さえる
ProgmatはL1戦争とはやや異なる。
狙っているのは、
日本の金融実務を動かす標準基盤
である。
Progmatには、
- Security Token
- Stablecoin
- Utility Token
- Token Manager
- Wallet
- RWA関連基盤
などがある。
さらに、
- オンチェーン完結型ST
- RWA Token
- STデータ連携
- トークン化株式
- トークン化法制度
といった領域へ拡張している。
Progmatの戦い方
ProgmatはBlockchainの性能だけを競わない。
法律
銀行
証券会社
信託
発行体
Custody
Settlement
投資家管理を一体で押さえに行く。
これは日本市場では非常に強い。
理想形
日本の法制度
│
Progmat
┌───────────┼──────────┐
│ │ │
ST SC RWA
│ │ │
証券会社 銀行 発行企業
│ │ │
└───────────┼──────────┘
│
外部DLT接続重要な点
ProgmatはEthereum、Canton、Cardano等と必ずしも排他的ではない。
むしろ、
日本金融と各DLTをつなぐ制度ゲートウェイ
になる方が強い。
勝ち筋
日本でトークン化金融を行うなら、Progmatを通すのが最も実務的。
これが定着すれば、日本国内で強力なネットワーク効果が生まれる。
5. Hyperledger / Linux Foundation Decentralized Trust
勝者になるのではなく、全員に武器を売る
Hyperledger系は特殊である。
Ethereumのような単一のPublic networkではなく、
- Fabric
- Fabric-X
- Besu
- FireFly
- Identity関連
- Tokenization関連
などのOSS群を提供する。
基本戦略は、
金融機関が自分自身のregulated DLTを作るための標準部品になる
ことだ。
Hyperledger型
Bank consortium
│
▼
Hyperledger Fabric-X
│
┌────┼────┐
ID Token Privacy
│ │ │
└────┼──────┘
│
Legacy systems最大の強み
Permissioned environmentを作りやすい。
- Identity
- Access Control
- Governance
- Audit
- Privacy
を最初から設計できる。
勝ち筋
どの金融機関が勝っても、内部でHyperledger技術が使われる。
つまりLinux型の立ち位置である。
「チェーン覇権」を取らなくても、生き残れる。
6. Cardano
Public chainのままregulated assetを扱う
Cardanoの方向転換で重要なのがProgrammable Tokenである。
従来CardanoのNative Assetはシンプルで優秀だった一方、
regulated assetに必要な、
- Freeze
- Transfer Restriction
- Allowlist
- Compliance
- Issuer Control
を標準的に扱う仕組みが弱かった。
そこでCIP-0113などを通じ、
Native Assetとしての特性を維持しつつ、規制条件を組み込む
方向へ進んでいる。
Ethereumとの違い
Ethereumでは、
ERC Token
+
Smart Contract Complianceという構造になりやすい。
Cardanoは、
Native Asset
+
Programmable Complianceを狙っている。
Cardanoの武器
| 武器 | 意味 |
|---|---|
| Native Assets | Token contract依存を減らせる |
| eUTXO | settlement挙動の予測可能性 |
| deterministic fee | 金融業務のコスト予測性 |
| Public decentralized L1 | 中立的shared settlement layer |
| Governance | protocol-level governanceを持つ |
最大の課題
Institutional adoptionがまだ弱い。
Ethereumには既に巨大なRWA・Stablecoin市場があり、Cantonには大手金融機関の実装がある。
Cardanoでは、
標準がある
ことと、
金融機関が本番利用している
ことの間を埋める必要がある。
Cardanoの勝ち筋
Cardano単独でEthereumに正面衝突するより、
CIP-0113
Programmable Asset
+
Attestation / Identity
+
Midnight
Private Compliance
+
Regulated Distributionというcompliance stackを作る方が合理的である。
7. Midnight
「見せずに証明する」を金融共通機能にする
Midnightは6陣営の中で最も異質である。
Midnightが本当に狙っているのは、
Financial Settlement Layerそのもの
より、
Private State + Compliance Proof Layer
だと考えられる。
Midnightの核心
従来型Blockchainでは、
KYC data
Asset
Balance
Transaction
↓
Blockchainに記録となりやすい。
Midnightが狙うのは、
Private data
KYC / Balance / ID
│
▼
ZK Proof
│
▼
「規則を満たしている」
ことだけ証明
│
▼
Settlementという構造である。
金融機関の要求との整合性
銀行が欲しいのは「完全匿名」ではない。
しかし全取引や顧客情報をPublicにすることもできない。
必要なのは、
Customer → KYC済み
Institution → Qualified Investor
Asset → Jurisdiction OK
Transaction → AML Rule OK
Regulator → 必要時監査可能
Public → 個人情報は見えないという状態である。
Midnightはここに適合しやすい。
最大の戦略的特徴
MidnightはEthereum、Cardano、Progmat等と競争しながら同時に補完できる。
もし複数のDLTに対して、
「この取引主体は規制条件を満たしている」
というproofを提供できるなら、
Midnightは単なる別のL1ではなく、
Regulated Internet of ValueのPrivacy / Trust Layer
になれる。
8. Canton vs Midnight
両者は似て見えるが設計思想が違う。
| 項目 | Canton | Midnight |
|---|---|---|
| 出発点 | TradFi | Public Blockchain |
| 主対象 | 金融機関 | 金融+Web3 |
| Privacy | 参加者間の可視性制御 | ZKによるprivate state証明 |
| Identity | Institutional participant中心 | Reusable / Private Identity |
| Settlement | 中核機能 | 可能だがPrivacyが主差別化 |
| Public composability | 制御型 | より広い |
| 既存金融採用 | 強い | これから |
| Cardano連携 | 基本なし | 構造的にあり |
一言で言えば、
Canton = Private Financial Network
Midnight = Privacy-preserving Public Infrastructure
である。
9. 6者は同じレイヤーで戦っていない
将来の構造は次のようになる可能性がある。
──────────────────────────────────────
Regulation
FSA / SEC / EU / BIS / IOSCO
──────────────────────────────────────
Identity / AML
KYC / VC / ZK Proof
│
┌───────────┴───────────┐
│ │
Midnight Enterprise ID
│ │
──────────────────────────────────────
Asset / Business Layer
Progmat / ERC / CIP-0113
──────────────────────────────────────
Execution / DLT
┌────────┬────────┬────────┬────────┐
Ethereum Canton Cardano Hyperledger
└────────┴────────┴────────┴────────┘
│
──────────────────────────────────────
Settlement
Stablecoin / Tokenized Deposit / CBDC
──────────────────────────────────────この構造では、ProgmatとMidnightはEthereumやCardanoやCantonと必ずしも排他的ではない。
むしろ他レイヤーを補完する。
10. 競争軸比較
以下は現時点の実装・採用状況を踏まえたCGTA評価であり、公式ランキングではない。
5点満点で評価する。
| 項目 | ETH/EVM | Canton | Progmat | Hyperledger | Cardano | Midnight |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Institutional adoption | 5 | 5 | 4 | 4 | 2 | 1-2 |
| Public liquidity | 5 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 |
| Privacy | 3-4 | 5 | 3 | 4 | 2 | 5 |
| Compliance tooling | 5 | 5 | 5 | 5 | 3-4 | 4 |
| RWA maturity | 5 | 5 | 4 | 4 | 3 | 2 |
| Identity | 4 | 4 | 3 | 5 | 3 | 5 |
| Permissionless innovation | 5 | 2-3 | 1 | 1-2 | 5 | 4 |
| 日本制度適合 | 3-4 | 3 | 5 | 4 | 2-3 | 2 |
| Existing TradFi integration | 4 | 5 | 5 | 5 | 2-3 | 1-2 |
| Neutral public settlement | 5 | 4 | 2 | 2 | 5 | 4 |
11. 各陣営の「勝ち筋」
Ethereum
LiquidityがLiquidityを呼ぶ。
資産、Stablecoin、RWA、DeFi、Custody、Oracleが既に同一経済圏にあること自体がmoatである。
Canton
Wall StreetそのものをNetwork Effectにする。
大手金融機関、市場インフラ、Custodianが集まることで機関金融ネットワークとして自己強化する。
Progmat
日本の制度・銀行・証券・信託実務をNetwork Effectにする。
「日本でSTやSCを発行するならProgmat」という標準ポジションを取る。
Hyperledger
Vendor-neutral infrastructureになる。
どの金融機関やチェーンが勝っても内部基盤として利用される。
Cardano
Public chain + Native Asset + Complianceを低複雑性で統合する。
Ethereumほど複雑なcontract stackを使わず、regulated assetをNative Assetとして扱えるなら差別化できる。
Midnight
Privacyを金融共通APIにする。
複数DLTに対してCompliance Proofを提供する位置に入れば、L1覇権競争とは別の非常に強いポジションを得られる。
12. Progmat × Midnightの意味
Progmatには既に、
Asset issuance
Legal structure
Investor registry
Settlement workflow
Japanese institutionsがある。
一方、今後さらに重要になるのが、
Privacy-preserving KYC
Selective Disclosure
Reusable Identity
Confidential business logic
Cross-domain compliance proofである。
ここはMidnightの得意領域である。
理論上、
日本の金融制度
│
Progmat
│
Tokenized Asset
│
┌─────────┴─────────┐
│ │
Settlement Compliance Proof
│ │
Ethereum/Canton Midnight
/Cardanoという構造は十分考えられる。
ただし、現時点でProgmatとMidnightの正式統合は確認できていない。
これは将来シナリオであり、事実と推測を分ける必要がある。
13. Cardano × Midnightの意味
Cardano単独でEthereumと戦う場合、相手はEthereum L1だけではない。
実際には、
Ethereum
+
ERC Standards
+
Oracle
+
ZK/FHE
+
Custody
+
Tokenization Platforms
+
Stablecoin Liquidityという巨大なinstitutional stackとの競争になる。
したがってCardanoには、
CIP-0113
Programmable Asset
+
Identity / Attestation
+
Midnight
Private Compliance
+
Regulated Distributionという一体型compliance stackが必要になる。
MidnightはCardanoの弱点である、
- Privacy
- Selective Disclosure
- Compliance Proof
- Confidential Identity
を補完できる可能性がある。
14. 5段階シナリオ分析:2026-2032
| Scenario | 推定確率 | 世界金融DLTの姿 | 有利な陣営 |
|---|---|---|---|
| S5 Open Regulated Finance | 20% | Public chain上でPrivacy/KYC/資産/決済が相互運用 | Ethereum、Cardano、Midnight |
| S4 Hybrid Multi-DLT | 45% | Canton/Progmat/HyperledgerとPublic chainが接続 | 全陣営共存 |
| S3 Institutional Walled Gardens | 20% | Canton・Progmat等の閉域/半閉域金融が中心 | Canton、Progmat、Hyperledger |
| S2 Ethereum Dominance | 10% | 規制機能もEthereum/L2へ集約 | Ethereum/EVM |
| S1 DLT停滞 | 5% | Tokenizationは進むがDLT利用自体は限定 | 既存金融IT |
中心シナリオ:S4 Hybrid Multi-DLT
最も現実的なのは、
単一のDLTが世界金融を独占するのではなく、規制金融・Public chain・Privacy network・業務基盤が接続する世界
である。
この場合、
- Canton:機関金融ネットワーク
- Progmat:日本制度・業務ゲートウェイ
- Hyperledger:企業内・コンソーシアム基盤
- Ethereum:Public liquidity / settlement
- Cardano:Public regulated asset
- Midnight:Privacy / Compliance Proof
という分業が成立し得る。
15. 最終ポジション
概念的には次のように整理できる。
OPEN
▲
│
Cardano │ Ethereum
│
│
Privacy ◀──── Midnight ┼────────── Liquidity
│
│
Canton │
│
Progmat
│
Hyperledger
▼
CONTROLLEDただし別軸として、「既存金融との距離」がある。
現時点では概ね、
既存金融に近い
│
├ Canton
├ Progmat
├ Hyperledger
├ Ethereum
├ Cardano
└ Midnight
│
既存金融から遠いと考えられる。
Midnightは技術的には金融向きであるが、
金融向きの技術である
ことと、
金融機関に大規模採用されている
ことは別である。
ここは明確に区別する必要がある。
16. CGTAの総合評価
現時点の先頭集団は、
EthereumとCanton
と考える。
ただし両者は同じ市場を真正面から奪い合っているわけではない。
Ethereum
Public marketからTradFiを吸収する。
Canton
TradFiをそのままDLT化する。
Progmat
日本の制度・業務レイヤーを押さえる。
Hyperledger
どの陣営が勝っても利用されるOSS部品を取る。
Cardano
Public decentralizationを保ちながらregulated asset layerを作る。
Midnight
複数金融ネットワークから利用されるPrivacy / Identity / Compliance Proof layerを目指す。
特にMidnightについては、
Cantonを倒して金融L1になる
ことが最大の勝ち筋とは限らない。
むしろ、
Ethereum、Cardano、Progmat、場合によっては他のregulated networkからも使われる横断的Privacy / Compliance Layerになる
方が非対称で強い戦略になり得る。
このポジションを取れれば、Midnightは他のDLTと競争しながら同時に補完関係を築ける。
そしてCardanoにとっても、Midnightを組み込んだregulated finance stackを作れるかどうかが、Ethereum/EVM・Canton陣営との差を縮める重要な鍵になる可能性がある。
17. 観測ポイント
今後追うべき指標は以下である。
- EthereumのInstitutional Privacy実装が本番金融へどこまで入るか
- Cantonに参加する銀行・証券・市場インフラがどこまで増えるか
- ProgmatがEthereum/Canton等の外部DLTとどこまで相互接続するか
- Hyperledger Fabric-X等がトークン化預金・CBDC・証券決済でどこまで使われるか
- Cardano CIP-0113が実際のregulated assetに採用されるか
- CardanoのIdentity / Attestation系標準が実装へ進むか
- Midnightが金融機関との正式提携・本番ユースケースを獲得するか
- MidnightがCardano以外のDLTへCompliance Proofを提供できるか
- 日本のPIPやトークン化預金実証でどのDLTが採用されるか
- StablecoinとTokenized Depositのどちらが主要settlement assetになるか
18. 結論
Regulated FinanceのDLT競争は、単純なL1戦争ではない。
本質は、
誰が金融のどのレイヤーを標準化するか
という競争である。
EthereumはLiquidityとPublic Settlement。
CantonはInstitutional Network。
Progmatは日本の制度・業務。
HyperledgerはEnterprise Infrastructure。
CardanoはPublic Regulated Asset。
MidnightはPrivacy / Identity / Compliance Proof。
最も可能性が高い未来は、これらが一つに収斂するのではなく、それぞれの強みを持ちながら相互接続するHybrid Multi-DLTである。
BWtakeがCardano・Midnightを観測する上では、
「CardanoがEthereumを倒せるか」
という問いより、
「Cardano + Midnightが、Ethereum/EVM institutional stackやCanton/Progmat系金融基盤と相互接続できるregulated finance stackを作れるか」
という問いの方が重要になる。
情報源
- Ethereum Foundation / Ethereum Institutional:RWA、Privacy、L2、Institutional Finance関連資料
- Canton Network公式:Institutional Finance、Privacy、Interoperability、Tokenized Assets関連資料
- Progmat公式:Security Token、Stablecoin、RWA、オンチェーン完結型ST、トークン化株式関連資料
- Linux Foundation Decentralized Trust:Hyperledger Fabric-X、Panurus、Identity / Privacy / Compliance関連資料
- Cardano Foundation:Programmable Tokens(CIP-0113)、RWA、Archax、Identity / Attestation関連資料
- Midnight Network公式:Programmable Privacy、Selective Disclosure、Reusable Identity、Regulated RWA関連資料
- 金融庁:暗号資産制度、ステーブルコイン、トークン化預金、Payment Innovation Project関連資料
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)
- 金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告」(2025年12月10日)
- 金融庁「資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2025年3月)
- デジタル庁「Web3.0研究会報告書」(2022年12月)
Fact Check Note
- Progmat × Midnightの正式統合は、現時点で確認できていない。
- Midnightの金融機関での大規模本番採用は、Ethereum/Canton/Progmat等と比べて初期段階と評価する。
- Cardano CIP-0113等の制度適合技術は重要だが、標準化と金融機関の本番採用は別問題である。
- 5段階シナリオおよび確率は、公式予測ではなくCGTAによる将来シナリオ分析である。